孫に食べさせたいふるさとの味

昔は全国の稲作地帯で食べられていた焼き米。食の近代化により、生産量は激減し、かつてのようにお店で見かける事は少なくなりました。 由布では「やっこめ」という呼び名で親しまれ、昔はどこの精米所でも焼き米加工でき、由布の人々にとってはとても身近な食べ物でした。やっこめの作り手がいなくなる中、大塚さんは初孫にふるさとの味を食べさせたいと一念発起。町内の方から古い機械を譲り受け、やっこめを作り始めました。

早刈りの青米にこだわった玄米を使用

一般的には成熟した玄米を使用する事が多い焼き米。由布では早刈りの玄米を使用していているので、甘みがあり早熟の青い米の香りがします。 焼き米はぺったんこに潰したものや、米の形が残ったつぶつぶ感があるものとその製法はさまざま。由布のやっこめはモチモチの食感と米のつぶつぶ感が味わえるのが特徴です。

大塚さんの熟練の技が生み出す逸品

やっこめ作りは8月のお盆過ぎから9月の終わり頃まで行われます。 やっこめはまず、早刈りした米を籾のまま1日水に浸けます。 それから焙煎、籾摺り、籾取り、潰すという工程を行います。早熟の米なので中々籾が取れず、その都度籾取りをします。成熟した玄米と比べると作れる量が少なくなり、焙煎の高い技術力も必要とされます。 焙煎は10年やっても難しく、大塚さんも最初の3年位は手探りの為、失敗されたようです。それでも諦めずに焙煎の技を磨き続けた大塚さん。釜と向かう姿は職人の魂が感じられます。

私がUターンを決意し、地元に戻る準備をしていた頃、近所の大塚さんが、昔ながらの方法でやっこめを手作りしていることを知りました。子供の頃は地味で単調なやっこめが好きではありませんでしたが、大人になって改めてやっこめを食べてみると香ばしくて風味があって美味しく感じました。

作り手が減り、生産量が少なくなる中、この大分由布のふるさとの味が途絶えていく事にふと寂しさを覚えました。 それから大塚さんの所に通うようになり、やっこめ作りの行程を見学させてもらいました。

絶妙な火加減が必要になるやっこめの焙煎。8月には釜炒り時の室温が40〜50度にもなります。汗だくになりながら作業する姿や大塚さんのやっこめへの愛情を知り、この大塚さんのやっこめを全国の皆さんに食べていただきたいと思いました。